「本気で逃げるから本気で追わないで〜!」

小谷野敦逃亡記

(2:レビューでエキサイト!)

発端は、2006年9月30日、SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)ミクシィに僕が書いたレビュー。『禁煙ファシズムと戦う』の根本的な問題点に切り込んでおいた。すると、毎日ミクシィ三昧、コメントチェック三昧の小谷野敦氏が頭に血を逆流させて、僕のミクシィ日記に乱入してきたというわけだ。 まずは、発端となったレビューをそのまま引用してみることにする。

※『禁煙ファシズムと戦う』レビュー

編著者の小谷野敦という人は初めて知った。極端に短気な人のようだ。短気でもかまわないが、論理の組み立て方の基本ができていない人だ。

たとえばこんな記述。
「だいたい電車内で、携帯電話の使用はご遠慮くださいとアナウンスが流れているのに平然と用いている連中がいる以上、車内で喫煙しても良い道理になるし」(P29)

他にルール違反者がいればルール違反してもよい、という意味だろうが、そんな屁理屈を認めると社会自体が成り立たなくなってしまう。万事この調子だ。
それだけならまだしも、いたるところで区の職員や店の従業員を「怒鳴りつけた」り「罵倒」したりしているのは、この人大丈夫なのかと心配になる。
何より驚いたのは、作者自身が提案する「禁煙ファシズム」論を読者に伝えるポイントを根本的に理解できていないことだ。 「受動喫煙」が有害なのか無害なのか? 「禁煙ファシズム」問題の大前提がハッキリしないと議論が始まらない。

1) もしも「受動喫煙」が有害なら

この本はカスである。本の主張全体がこじつけになる。

2) もしも「受動喫煙」が無害なら

ここが議論のスタートのはず。だが、その根拠があまりに子供ダマシなのだ。
小谷野氏が根拠にしている論文の執筆者エンストロームは「煙草会社から資金提供を受けていた」人だそうだ。世界中に数ある論文から、なぜそれを選ぶのかがまず疑問だ。
とはいえ、論文の正しさは論文そのもの内容で判断すべきという主張は、まあわかる。で、巻末に論文の日本語訳が掲載されているのだが・・・???  これを読んで論文の真偽を正確に判断できる読者は1%でもいるだろうか。ひととおり目を通してみたが、条件や数値を誤魔化す余地はいくらでもありそうだ。

ためしにgoogleに「エンストローム論文」と入れて検索すると、学会の定説でもなんでもなく、かなり批判に晒されている論文だということがわかる。 論文の正当性の判断はとりあえず差し控えるにしても、このアヤしげな論文だけを根拠に「受動喫煙」が無害だといわれても無理がありすぎる。 読者をバカにしているか、作者がバカなのか、どちらかに違いない。
WHOや厚労省、国立がんセンターの公式見解と正反対の主張をしているのである。少しは読者に「へえ〜そうなんだ」と思わせる説得力のあるネタを仕入れてほしいものだ。

・・・というか、ちょっと調べれば、「受動喫煙」と「肺がん」のリスクに関する疫学調査は世界に何十例もあり、それらを総合的に判断した結果、世界各国の公共機関で両者の関連が明白に結論づけられていることがわかるはず。(たとえばアメリカでは、環境中たばこ煙を「ヒトにがんをおこすことが確証された物資=Aグループ発がん物質」と認定している)
それを世界中に「平山論文」と「エンストローム論文」の二種類しかないような印象操作をするのは、読者に対するペテン行為以外の何ものでもない。

結論:小谷野敦=読者をバカにしたバカ

とはいえ、この小谷野氏には期待する部分もある。 「本気で戦うから本気でかかって来い!」と機会あらば訴訟も辞さない心構えなのだ。

小谷野〜〜〜〜っ!! どんどんやれっ!!!!!

裁判が頻繁に繰り返されれば、必然的に私たち一般人にもタバコ問題の真実が見えてくるはずだ。そして長い目でみれば、きっとよりよい方向に進んでいくのだと信じたい。
バカはバカなりに世の中に貢献してほしいと切に願う。

小谷野氏には今後への期待を込めて星1つ与えたい。

作成日時
2006年09月30日 23:32
満足度 ★☆☆☆☆

以上が僕のレビューである。

禁煙運動とファシズムの関係を考察すること自体はなかなか面白い視点だ。しかし、あくまで科学的・客観的事実を認めたうえで自説を展開するのが言論人として最低限のモラルというものだろう。そんな当たり前のプロセスを無視し、事実をムリヤリねじ曲げてまで現代の禁煙運動に「ファシズム」のレッテル貼りをしようとしたところに『禁煙ファシズムと戦う』の決定的ないかがわしさがある。

参考までに触れておけば、世界最初の大規模な禁煙運動が悪名高きナチスドイツで展開されたのは有名な話だ。『健康帝国ナチス』(草思社)に詳しい。しかし、ヒトラーの歴史的愚行があろうがなかろうが、あなたが今日吸うタバコの煙についての科学的事実は変わりようがないのである。

それはともかく、僕のレビューで一番イタイところを突かれた小谷野氏は理性を失ったまま僕の日記に乱入してきたのだ。ちょっと一服&リラックスとはいかなかったようである(笑



Original: 2006-Oct-17; updated: 2006-Nov-5;
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