「嘘まみれの嫌煙キャンペーン」レポートの嘘まみれ

超簡単!室井尚のタネ明かし

<4:小学生以下の計算能力!?>

バナナ写真

蛇口をひねれば毒の水!?

パンジー室井尚先生の珍レポートのお勉強もだんだん佳境に入ってきましたね。今度は算数のお勉強です。「2. タバコは発ガン物質の塊か?」を見てみましょう。こんな記述がでてきます。

一日に1リットルの水道水を摂取すれば、それはタバコの約一万倍の「発ガン物質」を摂取していることになるのです。

さすがミラクル室井尚大先生。またもや日本政府が転覆しちゃいそうな超大胆説を主張しています。昨今大問題になっているタバコよりも、蛇口をひねってジャーッ!の水道水の方が「発ガン物質」1万倍だったのですね。何だか目がクラクラしてきちゃいました…誰か、水、水…あ、お願いだから水道水はやめてねっ!

ふぅ〜〜。ちょっと奮発してペリエ(←ミネラルウォーター)でも飲んでスッキリしたところで、例によってパンジー先生のお書きになったデータを検証してみることにしましょう。
「タバコの約一万倍の『発ガン物質』」の根拠として、この段落に2つのデータが登場します。水道水とタバコそれぞれの「発ガン物質」についての数字ですね。

(1.水道水について)

我々が飲んでいる水道水には1グラムあたり約百万分の5グラムの発ガン物質「トリハロメタン」が含まれていますが、これは安全基準を満たしていているとされています。

(2.タバコについて)

確かに、タバコの成分中約1千万分の5グラム前後のいわゆる「発ガン物質」が含まれていることが知られています。

小学生以下の計算能力

まず最初に、ちょっとややこしく見える「単位」を整理しておきます。

 1g=1,000mg(ミリグラム)
 1mg=1,000μg(マイクログラム)
 1μg=1,000ng(ナノグラム)

です。「mg」(ミリグラム)は「タール3mg」「ニコチン0.3mg」などの表記でおなじみですね。

では、(1)の水道水についてのデータを見てみます。実際に水道水に含まれる「トリハロメタン」の量を調べてみましょう。こういう地道な作業って意外に大切なんですよ、皆さん。
東京都水道局サイトの表の「26 総トリハロメタン 0.1mg/L以下」という部分を見てみましょう。水質の基準値は水道水1L(リットル)中に0.1mg以下となっていますね。これはつまり生涯にわたり水を飲んでも人の健康に影響が生じない水準ということです。実際には、東京都水道局の水質検査結果を見てもわかるように、多い時期でもトリハロメタンが 0.05mg/L を越えることはまずありません。(表のどの地域でもいいのでPDFをダウンロードして「基26 総トリハロメタン」の項を見ればわかります)
ということで…

(水道局サイトのデータ)

水道水に含まれる発がん性物質(トリハロメタン)の量
=0.05mg/L(1リットル中に0.05ミリグラム)

としておきましょうか。
一方、パンジー室井先生のデータ「1グラムあたり約百万分の5グラム」はどうなのかというと…

  百万分の5グラム
 =0.000005g(グラム)
 =0.005mg(ミリグラム)

これが水道水「1グラムあたり」に含まれてるということで??????・・・って、何か変じゃないですか? 水道水に含まれるトリハロメタンの基準は「1リットルあたり」で表記されていましたよね。
「グラム」は重さ、「リットル」は体積の単位で、そもそも別物なんですけど。とりあえず「水1リットル=1,000グラム」で換算すると…

(室井尚先生のデータ)

「1グラムあたり約百万分の5グラム」
=0.005mg×1000/L
=5mg/L(水道水1リットルあたり5mg)

ということで両者を比較すると、ここだけで100倍違ってますね。ていうか「5mg/L」って、余裕で「基準値=0.1mg/L」を越えているありえない数値なんですけど。パンジー先生、またもやミラクル級の展開になっちゃっていますよ(笑
パンジー室井大先生が「1グラムあたり約百万分の5グラム」なんてわけの分からない数字をどこから引っ張り出してきたのか意味不明ですが、容易に推測できるのは…

室井尚は「リットル」(L)と「グラム」(g)をゴッチャにしている

ということですかね。「リットル」や「グラム」とかの単位って、たしか小学校で習うことじゃありませんでしたっけ?
ちなみに、この重大な間違いに気付いた私ワイネフは室井先生にお知らせすべく、室井先生のホームページ掲示板にコメントしておきました。「グラム」と「リットル」をゴッチャにしていますよって。我ながらとっても親切な行いです。だって尊敬する室井大先生が世間の皆さまの前で大恥かくところなんて見たくありませんから。
だけど、それに対する室井先生の反応は・・・

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でした。ああ〜、パンジー室井大先生の超ウルトラミラクルスーパー天才頭脳にはもうついていけないかも…

完全にデタラメ

もうひとつはサクッと片づけておきましょう。

タバコの成分中約1千万分の5グラム前後のいわゆる「発ガン物質」が含まれていることが知られています。

について。厚生労働省サイトを見ると発がん物質の表が載っているので合計を計算してみます。物質によって含有量に幅がありますが、とりあえず一番少ないデータをぜんぶ足し算してみましょう。(計算機で落ち着いて足し算すれば誰でもできますよ)

(厚生労働省データ)

主流煙+副流煙の発がん性物質
=2810.8+31572.6
=34383.4ng(ナノグラム)

一方、室井先生のデータ「1千万分の5グラム」はというと…

(室井尚データ)

 0.0000005g(グラム)
=0.0005mg(ミリグラム)
=0.5μg(マイクログラム)
=500ng(ナノグラム)

この2つを比べると…

34383.4÷500=68.7…

ざっと68倍違います。つまり、パンジー室井先生は水道水に含まれる発がん性物質(トリハロメタン)を100倍多く書き、タバコの煙に含まれる発がん性物質を68分の1の少なさで表記していたというわけですね。ということで水道水の100倍と掛けあわせると…

単純計算で6,800倍違っています(笑)

念のため言っておくと、ひとくちに「発ガン性」と言っても物質によってその度合いは様々です。だから、こうやって乱暴に計算して、「水道水はタバコの●●倍発がん性がある」(あるいはその逆)と言うことは、実際にはあんまり意味がないでしょう。それに今回はタバコの三大有害物質「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」を除外した計算ですし。
とはいえ、ひとつだけ明白なのは…

一日に1リットルの水道水を摂取すれば、それはタバコの約一万倍の「発ガン物質」を摂取していることになるのです。

パンジー室井尚先生の「データ」は完全にデタラメだということです。

久しぶりに算数やって頭が疲れちゃったって人は、コップに水道水を入れてゴクッと飲んでおきましょう。いや、大丈夫ですって。



Original: 2006-Nov-14;
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